「あつい水」はない!

まず、日本語で「水」とは冷たいものです。

そして、英語の “hot water” のように「温かい水」や「あつい水」という表現はありません。

水が温かく/あつくなると、それは

「お湯」(hot water) になります。(ポイント1)

ちなみに、水がこおると、「氷」になります。

次に、「わかす」(to boil) という動詞を使う時、日本語では「水をわかす」とは言いません。

「お湯をわかす」と言うのです。(ポイント2)

変ですね。「わかす」とは「水をあつくすること」なのに・・・

これに対して、ある本 (*1)で英語では次のように言えると書いてあります。

The kettle was not quite boiling when Miss Somers poured the water on to the tea, ........ Miss Griffith, the efficient head typist, ......said sharply : "Water not boiling again, Somers!"                   Agatha Christie, "A Pocket Full of Rye"

上の二つのポイントをまとめて、この英語の文を訳すと、こうなります。

Somers はお湯を注いだ。

またお湯がわいていないよ!

「お湯がわく」は自動詞の文で、”Water boils” という意味です。

それでは、次に下の例文を見てください。どれが正しいでしょうか?

  1. 水を 冷やす。(ひやす)

  2. 水を 冷ます。(さます)

  3. お湯を 冷やす。

  4. お湯を 冷ます。

正しい答えは1と4です。「冷やす」とは「冷たい物をもっと冷たくすること」で、「冷ます」とは「冷たくないものを冷たくすること」です。例えば、

このビールはあまり冷たくないから、もっと冷やそう。

このお茶は熱くて、飲めないから、ちょっと冷まそう。

また、「冷やす(ひやす)」と「冷ます(さます)」は他動詞ですが、「冷える(ひえる)」と「冷める(さめる)」は自動詞です。自動詞の文は次のようになります。助詞が「を」から「が」に変わります!

ビールが 冷える。

お茶が 冷める。

「冷やす(ひやす)」「冷ます(さます)」「冷える(ひえる)」「冷める(さめる)」は飲み物だけではなく、食べ物にも使えます。アイスクリームや焼いたばかりのケーキなどとどうやって使うか、考えてみてください。

*1) 『ことばと文化』、鈴木孝夫、岩波新書、1973年

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