してやる させてもらう
今日はお寺からのメッセージを紹介します。私の家の近くのお寺の入り口にある掲示板に、お坊さんからのメッセージが貼ってあります。それは仏教的、または宗教的な文章で、時々変わります。最近のメッセージは次の文でした。
「してやる」は恩着せ。「させてもらう」は布施。
恩着せ(おんきせ):自分が相手にした好意に対して、感謝してもらうことを期待すること、to expect someone to be grateful for what you have done
布施(ふせ):仏教のお坊さんがお経を読んでくれたことなどへのお礼として、信者がお金や物をあげること、 an offereing to a priest in return for his services
次に「してやる」と「させてもらう」の意味を確認しましょう。
してやる ⇒ する+あげる
させてもらう ⇒ させる(するの使役形)+もらう
「あげる」を使うことで、自分が相手より上の立場にいるニュアンスが出ます。例えば、友だちが困っていて、手伝いを必要としている時に、次のように言うと、「私はできる自信がある」という感じが表わされます。
私がしてあげるよ。
私がやってあげるよ。(もっとカジュアル)
これだけなら、必ずしも失礼な感じになるとは思いませんが、言い方によっては恩着せがましい (demanding gratitude) ことがあります。
(あなたができないから、)私がしてあげたんだよ!
私がやってあげたんだよ!(もっとカジュアル)
これは「私がしたことをありがたいと思って」 というニュアンスが強く出ています。普通の場面で、相手はこれを言われると、「えっ、何?」と思うでしょうが、何度も失敗する相手にあなたがイライラしている時なら、この文はあなたの気持ちに合っているでしょうか?
一方、「させてもらう」の「させる」は使役形ですが、意味は強制ではなく、「許可」なので、「自分の行為に相手から許可をもらう」という場合に使われます。先の例と同じように、友だちが手伝いをしている時に、次のように言うと、「私もできるか、どうか、わからないけど、試す」という感じです。
させてもらってもいい?
やらせてもらってもいい?
自分が上の立場にいるというニュアンスは全くなく、謙虚な言い方です。 他の例では、「私は田中さんと一緒に仕事をしています。」と言いたい時に、日本人はよく次のように言います。
私は田中さんと仕事をさせてもらっています。
私は田中さんと仕事をさせていただいています。(もっと丁寧)
これは、「私は田中さんから学ぶことがたくさんあって、田中さんと一緒に働けることを感謝している」ことを表しています。実際に、そうでなくても、こう言っておけば、だれも悪い気持ちにはならないので、このような謙虚な表現は本当によく使われていると思います。ただ、使いすぎると、嘘っぽく聞こえることもあります。
この二つを使い分けるのはなかなか難しいと思いますが、相手と自分の関係、場面などがポイントです。でも、一番いいのは相手に対する自分の気持ちに正直になることかもしれませんね。